電気自動車やノートパソコンなどに用いられている電圧の変換機器がDC-DCコンバータです。DC-DCコンバータの中でも、入力した電圧を高い電圧に変換する際に用いられるのが昇圧型DC-DCコンバータです。
本記事では、昇圧型DC-DCコンバータの概要や動作原理、降圧型DC-DCコンバータとの違い、目的などを解説します。
昇圧型DC-DCコンバータとは?
コンバータは、交流や直流を、直流に変換するための装置です。このうちDC-DCコンバータは直流(DC)を直流(DC)に変換する装置です。
DC-DCコンバータには昇圧型と降圧型があります。それぞれの違いは次のとおりです。
- 昇圧型:入力した電圧よりも高い電圧に変換する
- 降圧型:入力した電圧よりも低い電圧に変換する
昇圧型DC-DCコンバータは、「ブーストコンバータ」「ステップ・アップ・コンバータ」「昇圧チョッパ」とも呼ばれることがあります。コイル(インダクタ)L、スイッチング素子(MOS FET)Q、ダイオードD、出力コンデンサCoutで構成されており、回路構成は下図のとおりです。
詳しくは後述しますが、昇圧コンバータはスイッチング素子がONのときにコイルLにエネルギーを蓄え、スイッチング素子がOFFのときに入力した電圧と一緒に蓄えたエネルギーを放出することで、入力電圧よりも高い電圧に変換します。
スイッチング素子がONになっている時間が長いほどコイルLにエネルギーが蓄えられ、出力電圧が高くなります。反対にスイッチング素子がOFFになっている時間が長いほど、出力電力は低くなります。
昇圧型DC-DCコンバータの動作原理
ここからは、昇圧型DC-DCコンバータの動作原理を、スイッチング素子(MOS FET Q)がONの場合とOFFの場合に分けて解説します。
スイッチング素子(MOS FET)QがONの場合
スイッチング素子がONの場合、電流はコイルLを通ってスイッチング素子へ流れます。コイルLに電流を流すことにより、エネルギーが蓄えられます。なお、この間に出力コンデンサCoutに充電されていた電流は、負荷抵抗Routに放電されます。
スイッチング素子(MOS FET)QがOFFの場合
スイッチング素子がOFFの場合は、電流はコイルL、ダイオードDの順番に流れ、出力コンデンサCoutと負荷抵抗Routの両方に流れます。この際に、入力電圧から入ったエネルギーと、コイルLに蓄えられたエネルギーを合わせて出力側に伝えることで、入力電圧よりも高い出力電圧が出力されます。
降圧型DC-DCコンバータとの違いは?
昇圧型DC-DCコンバータも、降圧型DC-DCコンバータも、コイル(インダクタ)L、スイッチング素子(MOS FET)Q、ダイオードD、出力コンデンサCoutで構成されています。どちらもコイルLにエネルギーを蓄えて放出する仕組みになります。下図のようにコイルL、スイッチング素子Q、ダイオードDの配置を変えることで降圧が可能です。
先述のように、昇圧型DC-DCコンバータは、スイッチング素子がOFFのときに、入力電圧から入ったエネルギーと、コイルLに蓄えられたエネルギーを合わせて出力部にエネルギーを供給します。一方、降圧型DC-DCコンバータは、スイッチング素子がOFFのときにコイルLに蓄えられたエネルギーのみを出力部に供給する仕組みとなっています。
昇圧型DC-DCコンバータの目的
昇圧型・降圧型DC-DCコンバータは、さまざまな電子機器をどこでも利用できるようにするために必要な装置です。
日本ではAC100Vのコンセントが一般的ですが、全ての電子機器がAC100Vの交流電流を使って動いているのではありません。例えばパソコンや家電、電気自動車などは、昇圧型・降圧型DC-DCコンバータを使って、電子機器内で電気を交流から直流に変換し、電圧を昇圧または降圧することで、はじめて作動します。ノートパソコン一つ取ってみても、ACアダプタやバッテリー、メモリなどさまざまな装置が組み合わさっており、全てを作動させるために各装置ごとに異なる電圧の電気を供給しなければなりません。この過程において、入力された電圧よりも高い電圧で出力する必要がある場合は、昇圧型DC-DCコンバータが活躍します。
昇圧型DC-DCコンバータの仕組みを把握しておこう
DC-DCコンバータとは直流(DC)の電圧を直流(DC)に変換する際に用いられる装置のことで、降圧型・昇圧型の2種類があります。昇圧型DC-DCコンバータは、入力電圧よりも高い電圧を出力したい場合に用いられます。降圧型コンバータに使用されている部品は昇圧型と変わりませんが、コンバータを構成する素子の配置が異なります。昇圧型コンバータはあらゆる電子機器に取り付けられており、我々にとってなくてはならない存在といえるでしょう。